私は、子供が産まれたら、義務教育を終えたら、働くなり勉強を続けるなり…とにかく人生にはあらゆる選択肢が存在することを提示してやれる親でありたいと考えている。

高校・大学が必ずしも、必要ではないのではないか?と感じているからだ。英会話教室でアルバイトをしたことがあるのだが、義務教育を終えているはずの人々がお金を出して、学び直しているのを目の当たりにした経験も影響している。何のための勉強なのか?腹落ちしていないまま学校に通っているとそうなってしまうのだと思う。

「皆が行くから」「就職に響くから」高校・大学に進むくらいであれば、その時に最も必要だと思うこと(世界一周でも、旅行でも留学でも、働くでもなんでも)に時間を費やし、その上で必要だと感じるのであればまた高校・大学へ進むのが良いのではないだろうか、と思っている。もちろんやりたい事があって、自ら進んで進学するのであれば良い。ただ、選択肢を提示するのは大人のやるべきことではないかと思う。

「やりたい事がある」と言ったときに「それじゃ食べていけない」と突き放すか、「やってみなさい」と背中を押すか、「じゃどうやって仕事にするか?」と一緒に考えるか。どちらの大人に出逢うかで子供の人生は変わる…と私は思っている。

本書のメインテーマである「20 under 20」はピーター・ティールによって設立された「大学教育は人生で成功するために必須のものであるとするアカデミズムの主張を無視した行いを促すところに本質を置いている」プログラムであり、「普通なら4年生大学に進学するはずの優秀な高校生グループを集めて、いち早く実生活を体験させることにより、大学教育と言うモデルが時代遅れのものになっていると証明しようとしている」という。

大学側も既に起業家育成コースを設けるなどして動いているようなので、「生きていく上で必要な、意味のあること」を学べる場になっていくのであろうと、何にせよ未来は明るいなと感じる。

ただ本書で紹介されている、シリコンバレーでのプロジェクトがこのまま進めば、きっと人間の構成要素がどんどんデータに置き換えられていく(信用、性格、いまは「個性」と言われる、数字では計測しづらいことまでも)のだと思うけれど、
そういう「目に見えない」ものはこれまでは(一部であれ)人間が判断し、調整できていたこと。それを機械で一律処できるようになれば、楽ではあるし効率も生産性も飛躍的に向上するのだろうけど、なんとも言えない空虚感がある。

日本で各個人にマイナンバーが割り当てられた時にも感じたけれど、どんどん人が「管理されやすく」なる時代になっている。まるで人がロボットにされていくような。ともすれば「自分の頭で考える」ことを (知らず知らずのうちに)手放してしまう人とそうでない人との二極化が進むんだろうなと思う。搾取する側、される側も。

性格の形成すらも、操作できる時代になっちゃうんだろうな…それがノンフィクションになっちゃったら、ちょっと怖いよね。


20 under 20 答えがない難問に挑むシリコンバレーの人々 [ アレクサンドラ・ウルフ ]


20 under 20 答えがない難問に挑むシリコンバレーの人々